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『自身の不妊体験からいつしか支援者へ』 輝く女性のインタビュー 松本 亜樹子さん

知ってほしい不妊のこと

「不妊治療を相談できる相手は、身の回りにほとんどいない現実」

不妊治療には、保険適用外のものも多く、1組の夫婦当たり、子供ができるまでの間に平均数百万円を費やすこともあります。多い人では、「子供を一人育て上げるほどの出費」ということも。

ただ、日本においては、情報量が少なく、また不妊で悩んでいることを周りの人に気軽に相談できる環境でもないため、不妊治療途中で、経済的、精神的な負担により途中でやめてしまう人の割合も7割近くになるのが現実です。

例えば、働きながら不妊治療をしている場合は、平日も病院にいかなくてはならないケースが出てきます。しかし、まだまだ、職場では言いづらい現実もあり、いかに社会全体の中で認知を広げていくかという課題もあります。

こういった環境を改善するために、松本さんは、テレビ出演や新聞での取材を受け、またご自身で情報発信をしながら、社会への理解を広げていく活動を続けています。

NPO法人Fineを立ち上げたきっかけ

NPO法人Fineを立ち上げたのは、松本さん自身の不妊治療の経験がきっかけでした。2004年当時の状況は、今よりももっと情報がわかりづらく、また周りに相談できる人が大変すくない状況だったと言います。

最初、同じような経験をした4名で活動を開始し、2005年にNPO法人として登録。地道な活動も実り、今では、会員数1300名を超え、多くの不妊で悩める女性の支えとなっています。

松本さんたちFineの活動には、より一人ひとりに寄り添いサポートを継続できるさまざまな取り組みがあります。その一つが、ピア・カウンセラー 養成講座。不妊治療を経験し、独自の研修を終え、試験に合格した認定ピア・カウンセラーは今、今全国に63名(2013年3月現在)。不妊に悩める人た ち、一人ひとりの相談に乗るなど、心のケアをしています。

「私たちの様々な取り組みは、すべて会員さんの声から生まれました。自分と同じように不妊を体験したカウンセラーが見つけられないという声が集まってできたのが、『ピア・カウンセラー養成講座』です。他にも『医療機関に声を伝えられない、言いたいことが言えない』という思いを持っている方が、ア ンケートの結果90%に上ったため、『このニーズも高い、なんとかしたい』と思い、医療施設団体の認定審査に患者代表審査員として参加したり、全国規模の アンケートを実施し、その結果を学会発表するなど、患者の意見がよりよいを施設づくりに反映されることを目指した活動を行なっています。」

その他にも、講演や有料・無料のカウンセリング、学会発表、施設への理解を広げる活動など、その活動は多岐にわたります。その一つ一つが、すべて 会員さんの声から生まれたそうです。徹底して一人の人の声、人生を大切にする思いが、提供する活動に繋がり、広がりを見せています。

妊活しながらでも他のことも楽しめる。

「妊活しながらでも、他のことも楽しみましょう」

松本さん自身の経験で、妊活をしている間は、自分のやりたいことを我慢していた経験がありました。

当時、アナウンサーの仕事をしながら企業の研修講師などもされていた松本さんは、一方的な教えるだけの研修のあり方ではなく、その人がもともともっている 能力をを引き上げていく「コーチング」に出会いました。「この手法であれば、より研修を受講する方のために、力になれるのではないか」そう思って、コーチ ングの勉強を本格的にしていきたいと思ったそうです。

しかし、そう思ったのが、妊活の最中ということもあり、金銭的、精神的な負担がある中で、自分の学びたかったコーチングの学校へ通うのを断念せざ るをえませんでした。現在は、妊活を終え、コーチングの学校も終了して資格を取得し、妊活コーチ、経営者向けのコーチとしてご活躍されています。

「私のように、夢や目標を断念して、妊活に励むことが、果たして良かったのか。一方で夢や目標への道を確保しながら、妊活を続ける方法もあったはず」

と、現在は、妊活中の方や、自身の夢や目標に向かって模索したり、悩んでいる方々のコーチとして、その人の人生に寄り添い、サポートしています。

自分の社会的に責任として

NPO法人として活動を続ける中で、「自分がやらなくても」という思いにかられる瞬間もあるそうです。理事長として運営を続ける中で、様々な人の繋がりから、組織として大きくなってきたのも事実ですが、その過程は決して楽な道ではなかったと言います。

それでも、なぜ、続けるのか疑問に思って聞いてみました。

Q.不妊というのは社会の中で、一つの大きな問題として存在しているのですが、それをなぜ、松本さんがやろうと思ったのですか?

なんでしょうね。確かに大変だし、無理かもと思ったときは何度もあります。不妊当事者によるNPO法人は、組織として不安定なんですね。基本的に はみなさん自身の高い志だけで活動してくださっているので、強要はできないですし、治療に関わる突発事項や様々な事情で急に支援活動に参加できなくなった り、どうしても人手が欲しい時に人手の確保が困難だったり、と実際の会の運営は大変なこともあります。

でも、誰かがやらなきゃと思ったんですよね。自分が不妊治療をしているときに、『社会に対して、広く不妊への理解を求めたいのなら、不妊は経済的、 精神的、更に時間など、さまざまな負担があるということを、当事者の誰かが言い続けなきゃいけないんですよ』という、不妊当事者のインタビュー記事を、雑誌で読んだんですね。

確かにそうかもしれない。と思ったんですけれど、その当時の私は、どこか他人ごとと思っていた部分がありました。正直、私はすぐに妊娠するんだから、言い続けるのは自分じゃない。自分にはできないから、誰かがやってくれたらいいのにな。って思ってたんですよね。

でも、自分の不妊治療が長くなってきた時に、やっぱり誰かが言い続けないといけないんだなと気が付いたんです。そうじゃないと、不妊を取り巻く環 境は、何一つ変わってくれないんだなって。あの時にその本で言っていた方の言葉、その「誰か」に自分になれるかどうかわからないけど、だめもとでやってみ てもいいのかもしれないなって思ったのがきっかけだったんです。

Q.活動を続けていく上での原動力ってなんでしょうか?

原動力といえば、挫けた時に原点に変えることの繰り返しです。

普段は、ネットでの発信が多くて、会員さんと直に会うことが少ないのですが、時折開催するおしゃべり会や講演会などでの皆さんと直にふれあって、 悩みや気持ちなどお話を聴くと、設立当初の気持ちがよみがえってきて、原点回帰ができるんです。中には、日ごろの思いがあふれてきて、こらえきれずに、涙を流される方も少なくなくて。

そのたびに『なんで、この人がここで泣かなきゃいけない世の中なんだろう』って思うんです。もっと日ごろから不妊のことをオープンにできる社会 だったら、ここまで孤独につらさを抱えることはないんじゃないかなって。『何が彼女たちをこんなに追い詰めちゃうんだろう』とすごく切なくなるんですね。

おしゃべり会に参加された方は、これまで誰にも言えなかったのがあって、仲間に出会えた、ホッとしたというものあると思うんです。これまで辛くて抑えて いた部分が出せたのもあると思う。そんなときに毎回、『こういった状況変えていくためにどうしたらいいんだろう』と思うんですね。これだけ情報化社会と言 われる2013年になっても、世の中で彼女たちは、治療をしていることも言えず、隠さなきゃいけない。それを話せるような世の中にどうやったらできるかな と思うと、フツフツと力が湧いてくるんです。

Q.今後の活動への抱負を教えて下さい。

私たちがしている活動は、一人ひとりの声は小さいかもしれませんが、それを集めて、届けるべきところへ届け、不妊に関する正しい知識と情報、また 理解を、社会に広げていくことです。誰かがやらなきゃいけないのであれば、私はその一人として活動を続けて行きたいと思っています。

お話を伺った方

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松本亜樹子さん

長崎県長崎市生まれ。学生時代より所属していたタレント事務所に所属。以来ナレーターモデル/アナウンサーとしての後進育成から人材育成に興味を持 ち、企業における人材育成・研修等、活動の場を広げる。徹底した顧客視点を見込まれ、総合商社やIT企業の新規事業(顧客開拓)部門にアドバイザーとして 関わる。研修講師として活動する中で、個々の可能性を広げる「コーチング」に出会い、認定コーチ資格を取得。コーチとしての活動も開始する。

また、結婚後体験した不妊の経験を活かして友人と共著で本を出版。それをきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援 する会~)を立ち上げる。現在は理事長として法人の事業に従事するとともに、コーチ(特に妊活コーチ)、企業研修講師、フリーアナウンサーとして活動中。

NPO法人Fine:webサイト

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